玄関の床をモルタル土間で作って家族の記憶に残るものにしませんか

家づくりに自分たちも参加したい、というお施主さんの気持ちを何とかしてかなえようと考えてみても、現場の進み具合と建て主のお仕事の調整がなかなか難しい、そんなことありませんか。

壁の左官を塗りたい。クロスを貼ってみたい。

ひと部屋の壁を塗るだけでも、初心者には丸一日かかる作業だったりします。それが数部屋となると、会社勤めの方の場合は数日休みを取ることになり、しかも身体は休みよりもぐったり疲れてしまったり。

ただ、家づくりに自分たちの手の跡を付けてもらうことは、ものに愛着を持つのと同じで、できればやったいただきたい作業でもあります。

そんな時におススメなのが玄関やアプローチの床仕上げ。

 

さて、玄関の床、何で仕上げていますか。雨にぬれ、夏も直射日光にさらされるアプローチや玄関の床を何で仕上げるのか。防滑性、耐久性を考えるとそれほど選択肢は多くありません。一般的なのはタイル。石貼りも多いですが、天然石に負けない表情のタイルが多くなって、タイル貼りが多いでしょうか。

施主参加に適した床仕上げはモルタル、コンクリートの仕上げです。

コテで平坦に仕上げたり、刷毛引きをして滑りにくくしたりでき、階段やスロープなどの形状も自由なモルタル仕上げは、ちょっとしたDIY参加にもってこいです。

コネクトが何度か実践したのは、モルタル面にビー玉を埋めて、アクセントとする仕上げ。庫裏のアプローチに施した時は、門徒さんの子供たちにも参加してもらって、ワークショップ的にワイワイと作業しました。部分的な作業ながら、子供にとっては成長した後も、このビー玉は私が埋めたもの、という記憶に残っているのではないでしょうか。

この住宅では玄関内のコテ仕上げ部分にビー玉を施工。まだ幼いこどもだったので、足場から一歩はみ出してコテ仕上げ部分を汚してはいけないと、あまり多くのお手伝いは難しかったのですが、シュークローク内には家族の手形もつけて、成長の記録も付けました。

いつしか次の世代に引き継いだ時にも、記憶をつなげてもらいたいですね。

玄関ホールを生活空間の一部とするためのあれこれ

家の間取りを考える時、廊下を通ってそれぞれの部屋につながることを前提にするのはやめましょう、とよく言われています。「廊下」が本当に必要なのか、無駄な空間になっていないかを一度考えましょう、ということですね。リビングを通って各部屋につながるような配置、間取りができるようであれば、廊下は無くてもいい。

では玄関や玄関ホールはどうするのか。靴を脱がない生活をするならまだしも、下足を脱ぐ場所としての玄関はどうしても無くせません。靴を収納するスペースも玄関廻りに必要です。玄関ホールは小さくても無くせない場所になります。

コネクトでは廊下は極力なくす一方で、玄関ホールは広く確保します。なぜなら、玄関ホールを帰宅時の通過動線とだけ考えず、いろいろな使い方ができる場所にしているからです。様々な事例を紹介してみましょう。

墨モルタルで仕上げたこの玄関は、京都の長屋のように細長く、部屋と並行して配置されています。奥に見えるのが玄関扉で、実は反対側には庭に出るためのもう一つの出入り口があります。まさに長屋の通り土間と同じです。

雨の日には自転車を入れ、雨合羽をいくつかけても大丈夫。リビングからよく見えるように、建具はガラスの框扉とし、横には腰窓を設けています。玄関扉を開けてもリビングまでは見渡せないので、夜も天井の裸電球を灯すことで、リビングの一部として玄関までの広がりを感じられる仕上がりです。

しっとりとした和の雰囲気のあるこちらの玄関は点前右手にある白い4枚引き戸によってリビングとつながっています。つまり、全開放すればこのように玄関がリビングの一部としてつながります。玄関扉は正面右手にあるので、こちらも来客にリビングまでは見通せません。

また写真では少しわかりにくいですが、正面のスポットライトが当たっているところは、自窓から上部の壁までが出窓のようになっています。地窓上枠には奥行に納まるように木製のカウンターが設けられ、わずか12センチ程度ですが、ここを床の間として飾り付けができるようにしてあります。出窓上部にはハンガーレールが付けられ、季節の軸飾りができます。カウンターには一輪挿しからちょっとした花飾りや、置物を置くのもかわいいですね。

こちらの玄関は少し変わった施主の要望から生まれた通り抜け玄関。墨モルタルの玄関の手前側がリビング、そして奥側がダイニングになっています。来客をにはお茶を出したり、お話ししたりするので、基本的にはダイニングにお通しする。反対にリビングは家族だけのスペースと割り切っているので、あえて2つに分割しています。玄関はその間に挟まれるように配置しています。実際の生活では、土間の濡れている部分にスノコが置かれて、家族の行き来もできるような場所です。

写真では扉が収納されていますが、床にレールがある場所に扉があり、玄関とリビング、玄関とダイニング、それぞれを仕切ることができます。真冬や真夏でない限り、通常は開放してお使いいただいている、そんな玄関です。

 

このように、くつぬぎの場所だけではない使い方ができると、玄関が魅力的な場所として生活と寄り添った場所にすることができます。皆さんも工夫されてみてください。

玄関扉を引き戸で作りたいときに配慮すべきこととは

和の生活の良いところを積極的に取り入れたいと考えているコネクトとしては、玄関扉の選択肢はまず引き戸です。お客様を迎える時に、開き戸はどうしても一歩下がる必要があり、心理的に少し遠くなる。これが引き戸だと横に移動させるだけなので、気持ちが途切れない。そんなこともあり、家づくりの設計を始めた20年ほど前は、条件が許せば玄関扉は自由に設計して木製の造作建具で作ることを好んで実践していました。扉の脇にはめ殺しのガラス壁を設けたり、表面に貼る木の材質を何にしようか考えたりと、家の顔ともなるべき場所はその家族にとってのオンリーワンになるように工夫していました。

ちなみに条件とは、敷地に防火地域・準防火地域などの防火地域設定がされていて、延焼の恐れのある範囲に玄関扉が含まれている場合、木製は難しいのです。

時代を経て建物の性能が重視されるようになり、特に開口部には数値で示された高い断熱性能のある樹脂サッシなどが使われるようになりました。玄関扉も例外ではなく、LixilやYKKなどの既製品のエントランスドアからセレクトするだけになることが多くなりました。その時になって既製品のラインナップがおかしいことに気づきました。断熱性能を重視すると、玄関扉では圧倒的に開き戸の方が種類豊富なんです。

引き戸や引き違い戸は昭和スタイルのままのデザインしか選べず、断熱性能も低い。玄関扉に限定せず、「窓」であれば引違いや片引き戸のサッシは一般商品で選択肢も豊富なのに、玄関には新たなラインナップは増えない。これも時代の流れか。家がコンパクトになって、間口の広い玄関、引違いの引き戸がつけられる玄関が減っているので仕方ないのでしょうね。事実私たちも引き違い戸のある玄関は、新築では設計したことがありません。

さて既製品ではなく、造作建具で片引き戸を玄関に設ける場合に配慮すべきことは何でしょうか。次に4点ほどあげてみます。

1 断熱性能は少しあきらめる

造作の片引き建具の場合、上下部分に隙間を設けることでドアがスムーズに動くことができています。全て閉めた状態で作動すれば隙間を埋めてくれるような金物がありますが、それも完全な気密性能を確保することは難しく、玄関扉に高い断熱性能を求めてはいけません。よって玄関ホールの夏は暑く、冬は寒いと自覚しておきましょう。

造作ではなく、断熱性能はしっかり確保したい場合、建築家の伊礼智さんとユダ木工が共同開発された「MIYAMA桧玄関引き戸シリーズ」がおススメ。さすが伊礼さん、かゆい所に手が届くような商品をつくられています。残念ながらコネクトではまだ使う機会が訪れていません。

 

2 沓摺はあえて段差を設ける

引き戸イコール床の段差なく、バリアフリーな出入口、というイメージがあるかもしれません。吊引き戸にすれば実際に段差ゼロの出入り口を作ることは可能です。ただどうしても砂ぼこりやゴミが土間部分に入りがち。わずか5ミリくらいでも良いので段差があった方が室内がきれいに保てます。

 

3 網戸を別途設けるかどうか考える

引き戸の場合、比較的簡単に網戸を設けることができます。プリーツではなく、木枠のある網戸です。もちろん玄関なので、防犯性を優先すれば網戸はアウトですが、一時的な風の通りを確保して、夏であれば遠方から帰宅した時の熱気を逃がす時などに重宝します。人の気配を感じたいから、といってあえて網戸を設ける場合もあるでしょう。

 

4 引き戸ハンドルは経年で緩むと知っておく

これは我が家だけの現象かもしれませんが、築20年以上にもなると、ビス穴が広がるのか、乾燥で木がやせてくるからか、ハンドルは緩んでいます。不便ではないので、問題ない範囲です。扉を開ける時に、固定している方向と直交する力が毎回かかっているので、仕方ないと知っておきましょう。

 

このような配慮事項を事前に知って、納得できるようであれば、造作建具の玄関扉がおススメです。既製品の木目のシート貼りではなく、本物の木を使って、色味もデザインも自由に玄関扉を作ってはいかがでしょうか。