玄関扉を引き戸で作りたいときに配慮すべきこととは

和の生活の良いところを積極的に取り入れたいと考えているコネクトとしては、玄関扉の選択肢はまず引き戸です。お客様を迎える時に、開き戸はどうしても一歩下がる必要があり、心理的に少し遠くなる。これが引き戸だと横に移動させるだけなので、気持ちが途切れない。そんなこともあり、家づくりの設計を始めた20年ほど前は、条件が許せば玄関扉は自由に設計して木製の造作建具で作ることを好んで実践していました。扉の脇にはめ殺しのガラス壁を設けたり、表面に貼る木の材質を何にしようか考えたりと、家の顔ともなるべき場所はその家族にとってのオンリーワンになるように工夫していました。

ちなみに条件とは、敷地に防火地域・準防火地域などの防火地域設定がされていて、延焼の恐れのある範囲に玄関扉が含まれている場合、木製は難しいのです。

時代を経て建物の性能が重視されるようになり、特に開口部には数値で示された高い断熱性能のある樹脂サッシなどが使われるようになりました。玄関扉も例外ではなく、LixilやYKKなどの既製品のエントランスドアからセレクトするだけになることが多くなりました。その時になって既製品のラインナップがおかしいことに気づきました。断熱性能を重視すると、玄関扉では圧倒的に開き戸の方が種類豊富なんです。

引き戸や引き違い戸は昭和スタイルのままのデザインしか選べず、断熱性能も低い。玄関扉に限定せず、「窓」であれば引違いや片引き戸のサッシは一般商品で選択肢も豊富なのに、玄関には新たなラインナップは増えない。これも時代の流れか。家がコンパクトになって、間口の広い玄関、引違いの引き戸がつけられる玄関が減っているので仕方ないのでしょうね。事実私たちも引き違い戸のある玄関は、新築では設計したことがありません。

さて既製品ではなく、造作建具で片引き戸を玄関に設ける場合に配慮すべきことは何でしょうか。次に4点ほどあげてみます。

1 断熱性能は少しあきらめる

造作の片引き建具の場合、上下部分に隙間を設けることでドアがスムーズに動くことができています。全て閉めた状態で作動すれば隙間を埋めてくれるような金物がありますが、それも完全な気密性能を確保することは難しく、玄関扉に高い断熱性能を求めてはいけません。よって玄関ホールの夏は暑く、冬は寒いと自覚しておきましょう。

造作ではなく、断熱性能はしっかり確保したい場合、建築家の伊礼智さんとユダ木工が共同開発された「MIYAMA桧玄関引き戸シリーズ」がおススメ。さすが伊礼さん、かゆい所に手が届くような商品をつくられています。残念ながらコネクトではまだ使う機会が訪れていません。

 

2 沓摺はあえて段差を設ける

引き戸イコール床の段差なく、バリアフリーな出入口、というイメージがあるかもしれません。吊引き戸にすれば実際に段差ゼロの出入り口を作ることは可能です。ただどうしても砂ぼこりやゴミが土間部分に入りがち。わずか5ミリくらいでも良いので段差があった方が室内がきれいに保てます。

 

3 網戸を別途設けるかどうか考える

引き戸の場合、比較的簡単に網戸を設けることができます。プリーツではなく、木枠のある網戸です。もちろん玄関なので、防犯性を優先すれば網戸はアウトですが、一時的な風の通りを確保して、夏であれば遠方から帰宅した時の熱気を逃がす時などに重宝します。人の気配を感じたいから、といってあえて網戸を設ける場合もあるでしょう。

 

4 引き戸ハンドルは経年で緩むと知っておく

これは我が家だけの現象かもしれませんが、築20年以上にもなると、ビス穴が広がるのか、乾燥で木がやせてくるからか、ハンドルは緩んでいます。不便ではないので、問題ない範囲です。扉を開ける時に、固定している方向と直交する力が毎回かかっているので、仕方ないと知っておきましょう。

 

このような配慮事項を事前に知って、納得できるようであれば、造作建具の玄関扉がおススメです。既製品の木目のシート貼りではなく、本物の木を使って、色味もデザインも自由に玄関扉を作ってはいかがでしょうか。