都内の展覧会ハシゴは散歩にぴったり 森美術館から根津美術館まで

都内で美術館を巡りながら散歩するのはどうですか。向かったのは梅雨の始まり期。まずはロン・ミュエク展。2008年に十和田市現代美術館スタンディング・ウーマンを見て以来。国内にいるとあまり見る機会がないのが普通なのかな。単体の作品を見るのも楽しいが、複数の作品が展示される個展は作品や作家の背景も含めて知ることができてさらに楽しい。一部を除いて写真撮影可だったので、写真もいくつか載せます。

ミュエク自身は作品についてあまり語らないようで、解釈は鑑賞者の判断。何といってもスーパーリアルな人の再現性が素晴らしい。皮膚のしわ、肌の色、皮膚の下の毛細血管、産毛、目の色、どれも本物としか思えない、生きているよう。ただし実際の人間より大きかったり、小さかったりすることで違和感を生み出している。大きくされた頭蓋骨の作品は縫合線も見事に表現され、生きていれば脳みそが詰まっている内側まで見ることが可能。鼻骨骨折の経験がある滝川は、ここの骨が折れたんだよね、と話しながら見ていました。

今にも動き出しそうな人物彫刻たちは、見る人それぞれがストーリーを自由に想像することができるので、子供たちにも人気な様子。小学生の団体がクリップボードを下げて見学していました。

SNSなどで画像だけ見ていると、スーパーリアルな彫刻にどんな意味があるのか?と遠い記憶の十和田以降は疑問に思っていた時期もありましたが、今回実物を再見してあまりのリアルさ加減にひれ伏すほどの圧倒感がある作品でした。職人技を通り越して、ミュエクにしか産み出すことができない作品群はみどころ満載でした。皆さんならどう感じる?

お昼は南翔饅頭店で小籠包ランチ。六本木ヒルズのオープン当初は行列だったことを思い出しながら、急ぎ足で向かうと、すんなり並ばず入店。調べてみたら2003年だから、もう20年以上前の出来事でした。ひと時代過ぎていて、もう落ち着いているわけです。

午後は目ぼしい展覧会がなかったので、根津美術館へ。山梨の近所には根津記念館という根津嘉一郎の生家が保存されて一般公開されています。こちらは記念館なので、美術品はなく、入場無料。犬の散歩で通るルートにあるので、勝手に親近感を抱いている根津嘉一郎。根津美術館は隈研吾がデザインした凛としたアプローチで気分転換してから入館。企画展は「はじめての古美術鑑賞 美術の中の文字」。お茶を習う過程で、軸飾りを拝見する機会が多く、わずかですが見る目が培われつつあります。勉強を兼ねて来訪。塩山の恵林寺茶道教室では禅宗に関係する軸が多いので、江戸期の大名が所有していた軸などは趣が違ってまた面白い。徳川家慶筆の風竹図はやけに落款が大きく、絵の一部となっていたり、酒井抱一筆の七夕図は画面構成が素晴らしかったり。また伝王振鵬筆の観音図は、観音様の輪郭など線だと思っていたラインが微細な文字を書き連ねることで線を表した作品。展示ケース内に設置してある拡大鏡を通してしか認識できないくらい小さい文字。14世紀の作とあるので、ルーペもスマホで拡大もできない。毛筆で書いているが、どうやって書いたのだと思える異常さ。書き手の緊張感がすさまじい。

屋内展示を見学後は庭園を散策。青山とは思えない緑の深い園内には茶室もある。しかもいくつかの茶室があちこちに点在してできるほど広い。川も流れ、船茶室までこしらえてあった。事業で儲けたお金を、価値のある美術品や日本庭園に投資し、こうして後世に残してくれているのは素晴らしい。

さてこの2つの美術館がある場所は六本木と青山。少し離れていますが、歩いて巡るのもちょうど良い距離。六本木通りから外苑西通りの一本西側の通りを曲がれば、20分ほどで歩けます。私たちは国立新美術館のミュージアムショップに立ち寄りしてから根津美術館に向かったので、青山霊園を通り抜けて約30分の距離でした。青山霊園も根津美術館の庭園も都内にいることを忘れてしまう緑に囲まれた環境。現代美術と古美術。どちらも堪能できたよき休日でした。