山梨事務所ソーラー計画-3 メーカーと仕様

太陽光発電のパネルは国内国外の電機メーカー、
太陽光専業メーカーなど数多くある。
建築家としてはクライアントの希望に合致するものを
設置場所や予算に応じてセレクトしたいところ。
しかしながら日進月歩する新しい技術分野のもの。
また太陽光発電として世界一の企業でも
数年前に撤退したことがある、という話を聞いたりすると
都度新しい情報を仕入れなくてはならない。
これは照明のLEDと同じ。
建築家も苦労しているのです(笑)。
さて太陽光発電のメーカーを決める上で気になるポイントは
何といっても①発電量と②価格だろう。
しかしこの2点はウェブで調べればわかること。
ここでは次のような違いがメーカーによってあることをお伝えしたい。
③機器設置場所の違い
システムには接続箱、パワーコンディショナー、売電メーターなどの
パネル以外の機器が必要になってくる。
交流を直流に変えるためのパワーコンディショナーは、
発熱をするためトイレや物置などの
1畳程度の閉じた空間に置くことは好ましくない機器。
シャープでは接続箱とパワーコンディショナーを
1つのボックスに納めて、屋外に設置する。
外なので熱がこもる心配はないが、パネルを置く屋根面が
主に南側になることを考えると、
南面に近い軒下や外壁に大きなボックスが付いてしまうので
デザイン的に難点になるでしょう。
その他のメーカーは接続箱は外部、
パワーコンディショナーは内部に設置する。
この場合苦労するのがどの部屋に置くか、である。
分電盤に近く、湿気が少なく、かつ1畳以上の部屋
というのが実はなかなかない。これが悩みどころ。
これから住宅を新築するなら、機器設置場所をどうするか
あらかじめ想定して設計しておくべきだろう。
ちなみに「○○の家」では分電盤の真上にたまたまあった
2階のウォークインクローゼットが設置場所になりました。
④パネル設置の離隔距離
離隔距離とは軒先からパネルまでの距離のこと。
これがメーカーによって異なる。
風でパネルが飛ばされることがないように、
またメンテナンスをするときに足場がなくてもいいようにと
軒先からパネルまで一定の距離を確保することが一般的。
しかしながら離隔距離さえ必要無ければ、
設置できるパネル枚数が増やせることも事実。
小さな家が多い日本。
できるだけいっぱいパネルを載せて発電したいじゃありませんか。
設置ができるのであれば、何とかメンテナンスはできるだろうし、
耐風性能は別の仕組みでカバーできないものでしょうか。
何と「○○の家」では離隔距離がゼロで良いメーカーでした。
だったら、もっとパネルを増やそうということで、
当初の4kw程度から5.5kwに拡大。
ケヤキで陰になる分、基本の発電量を増やすことにもつながりました。
①発電量
とは言っても、やはり気になるのが発電量。
今日現在では昔のサンヨー、今のパナソニックが扱っている
HITは単位面積当たりの発電量が大きい。
東芝もカタログ上では同程度のものを持っているのだが、
比較方法が違うらしく、実際の発電量は少し低いらしい。
「○○の家」で採用したのはパナソニックがOEMで長州産業に
出しているHITのパネル。
実は契約後、サンテックパワーを扱っている会社から
もう少し発電量の大きなパネルが出る、という話を聞きました。
それでも太陽光発電のシステム全体の効率は今だ10%台。
飛躍的な技術の進歩を待つのがいいのか、常に議論は分かれるところ。
次回は施工会社について書いてみたいと思います。

山梨事務所ソーラー計画-2 屋根への固定方法

建物に太陽光発電のパネルを置く場所は、もちろん屋根。
屋根といえば、雨や熱から建物と人を守るもの。
特に屋根の防水工事は、材料メーカーから防水保証が出るため
施工方法に関しても細かな規定があり、
屋根の勾配、防水材のかぶり寸法、下地材料などが防水材、屋根材ごとに
あらかじめ決められている。
太陽光のパネルはこの上に固定しなければならないもの。
前回のブログにも書きましたが、現在パネルの固定方法の主流はアンカー方式。
単純にいえば、屋根材に穴を開け、下地の合板や垂木にまで届くような
金属の棒のようなものを差し込んで固定する、というもの。
アンカー工法
穴を開ける?
開けたところから雨漏りするんじゃないの?
というのが建築家の素朴な疑問。
建築家でなくとも、普通に家を作る工務店に聞いても
そりゃあおかしい、そのうち雨漏りするよ、となる。
そうだよな。
トップライト廻りのシーリングだって、年月たって硬化したら
シーリングの再施工をするのが当たり前。
もちろん細心の注意を払って開発された専用のコーキング部材などがあるようですが、
屋根の動き、風雨、熱などでアンカーが動くことを考えると
メンテナンスができるようになっていないと
少なくともパネルが壊れるまで長持ちしないのではないか。
パネルメーカーは認定された工法で取り付けないと保証ができない、
と言うにもかかわらず、屋根への固定はどのメーカーもアンカー方式だけが
カタログに掲載された認定工法になっている。
おかしいんじゃないか。
あと10年もすれば、太陽光発電を付けたがために
雨漏りする事例が多発するんじゃないかと心配でならない。
実際には屋根の防水、漏水は施工会社が保証し、
パネル等のシステムはメーカーが保証するので、
責任の所在は分かれているのだけれど、
認定工法という縛りでメーカーがコントロールをしているのが実態。
と素朴な疑問を持ちつつ、いろいろ問い合わせをしてみると、
アンカー方式ではなく、金物工法というのがあることがわかりました。
一部の金属板、もしくは瓦屋根の場合のみ対応可能なもので、
雪止め金物を元に開発された太陽光パネル専用の金物らしい。
雪止め金物は屋根に積もった雪を地面に落下させないようにするための金物で、
もともと屋根に穴を開けずに施工できるように屋根材メーカーや金物メーカーが
独自に用意していたもの。
下の写真は今回採用する予定のスワローの後付金物。
スワロー後付け金物
屋根下にあるシージングボードのおかげで、一時は取りつけ自体が
不可能かと思われたのが、根本的な疑問も解決する工法に巡り合いました。
しかしここで先ほどの、パネルメーカーの認定工法の問題が再浮上。
金物工法が認定されているパネルメーカーが実に少ない。
国内大手はほとんどダメ。
残ったのは2社しかありませんでした。
サンテックパワーと長州産業です。
次回はパネルメーカーの特徴について書いてみたいと思います。
太陽光パネルは日進月歩です。
LEDと同じで数カ月たったらもう情報としては古くなる世界ですが、
発電量だけではない視点からのお話を。

山梨事務所ソーラー計画-1 既存調査

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立面図
2005年に竣工した「ギャラリーのあるの家」。知り合う前の妻が設計をした実家の建物で、
現在ではコネクト山梨事務所の看板を掲げさせてもらっています。
物理の教師をしていた義父が、建設当初から太陽光発電に興味があり、
一部に南向きの屋根を用意しておいて、価格が落ち着いてきたころに
設置をしようと画策していたようです。
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まったこともあり、
そろそろやろうか、という話になりました。
ヨーロッパの事例を見ても、固定価格が高水準のまま維持できる期間が
いつまで続くかは不透明です。電気料金として負担する側の論議が
そのうち始まるでしょう。
10年程度の償還期間を考えると、始め時かもしれません。
さて、既存の屋根に太陽光発電を載せるので、
断面的な材料の構成、屋根の状態、影の影響などを調べることから始めました。
方位は真南に向いていてOK。
屋根の勾配は三寸勾配。良好な角度。
金属板横葺き、目立った不具合は無し。
しかし、5年ほど前にリビングから見えるところに植えたケヤキが
午前中に屋根に影を落とす位置であることが判明。
どんどん大きくなるケヤキ。
今さら動かすわけにもいかないので、
適宜枝払いをして、パネルを西側に寄せて配置することになりました。
これでどれほど影響回避ができるか、検証ポイントです。
断面構成でもハードルがありました。
金属板と、野地板である12mmの合板の間に、音鳴り防止用のシージングボードを
使っていることが判明。
設計図にはなかったものの、施工会社の配慮もあり、
現場変更で対応したようです。
このシージングボードにパネルメーカーがNOを出してきました。
発電パネルを屋根に固定をする方法として、現在主流なのがアンカー方式。
簡単にいえば、屋根材を貫通するビスを野地板や垂木まで通して
風で飛ばされないように、雪で流れてしまわないようにするもの。
実はかねてからこの固定方法が漏水を招くのではないか、
と疑念を持っているのですが、この話は次回に。
アンカー方式の場合、屋根材に穴を開けるので、その直下がフカフカしていると
どうやって漏水対策をしようとも、ビス廻りで動いてしまって
雨漏りにつながる、というのがメーカーの意見なのでしょう。
具体的に聞いていはいませんが、簡単に想像できる問題点です。
ではどうするか、数社の施工会社に見積もりを取りながらヒアリングをする中で
出てきた別の固定方法がありました。次回はパネルの屋根への固定方法について
書いてみたいと思います。

山梨住宅見学会


コネクト山梨事務所のある「玄関ギャラリーのある家」で住宅見学会を行いました。
ホームページにも告知してはいましたが、初回ということもあり
広範囲には宣伝をせず、主にはご近所の方に見学していただく機会となりました。
当日は梅雨の晴れ間の一日で、庭の緑がとてもきれいで
皆さんにゆったりと案内することができました。
写真はリビングの窓を開け放って、デッキの先に見える南の庭の風景です。
ケヤキが1・2階の窓から見えると、吹き抜けのタテの広がりがより感じられます。
7年経って、竣工時のピカピカな感じではなく、日々の生活で感じる使い勝手や
大きく育った庭木との関係、住まう家族の側の変化に家がどう対応しているかなど
とてもリアルで実感のある話が伝えられるのが、この見学会の売りです。
半年に1度ぐらいのゆったりペースになる予定ですが、
コネクトでは、設計事務所としてはなかなかない、こういった機会を提供できますので、
次回は行ってみたい!という方は、まずはメールか下記にコメントを下さい。
事前に案内を差し上げますので。