2つの箱を美しい風景に佇ます
玄関から奥に向かう長い動線の中で2つの箱がずれて重なり、多様に広がる空間で、家の中に街並みがあるような楽しい空間ができました。
Play & Study Spaceを中2階に配置することにより、リビングの延長としての広がりと同時に、親子双方のアクティビティを身近に感じることができます。夕陽のテラス、屋上デッキ、薪ストーブなどを設け、季節を十二分に楽しめる住まいです。
『風景』
敷地は丘陵地の一番上にありました。初めて伺うと、彼女が‘地球を買った’と表現したのが分かるぐらい素晴らしい場所でした。
豊かな自然の風景と市街地の遠景、東から西へ移動する陽の光、丘陵を渡る風、車で帰宅する時の家並みの風景などに思いを巡らせ、家族のアクティビティを包み込むような、佇まいを持った空間を創りたい。時を重ね、家族の、周辺住民の記憶に残る風景となるような家がそこには必要だと感じました。
『出会い』
ご夫妻は、それぞれの場所の素材にまでイメージを具体的に描いておられました。話を聞いている我々に彼らの想う空間の手触りまで伝わってくるようなメッセージの数々でした。
ご夫妻はその数々のイメージがどのように一つのまとまりを持った空間になるのか皆目見当がつかず、またそれを見せてくれる建築家にも出会えずにいたのでした。
『一つ一つ積み上げる』
設計の中で一つ一つの素材について検討を重ねる中、ご夫妻の要望にすぐに対応できなかった物に『建具の取手』がありました。流通しているメーカー物ではなくて、一点物のような世界観。かといって高価ではなく、昭和の時代のぬくもりがあるようなシンプルで素材感がしっかりとある物。そんなものを探し歩いて、アンティーク物を奥様ご自身でサビをとり、黒塗装したものを私が指示書を添付して建具屋さんへ指示を出す。そんな手探りのような課程を全ての工程で行い、一つ一つ濃密に積み上げた想いの深い建物となりました。