珪藻土と聞くとクロスや左官材を思い浮かべる人は建築ツウな方。
七輪でしょ、というのが昔は当たり前でした。
今から15年ほど前に日本の珪藻土の一大産地である石川県珠洲市のホテルの現場に常駐していました。
珪藻土を建材として使うということが一般的になる前でしたが、
そのホテルの現場では左官材として内装の壁に珪藻土を塗ったのです。
それもロビーや廊下のほとんど全部に。
県を代表する左官会社が、「それはおもしろい」と言って協力してくれ
試行錯誤をしながらやり遂げたのでした。
こう書くと自分も頑張ったようですが、
このホテルは前の事務所に入社して1か月で向かわされたところ。
まだ右も左もわからない頃でした。
珪藻土を使うことは先輩たちが決めていたことで、
私はフムフムとそれを遂行する係でした。
写真にあるのはその頃買ったコンロ。
現場の前に珪藻土の工場があり、そこの土を塗るものだから
社長ともよく会話をしていたので、
じゃ、わたしもコンロひとつください、となったのです。
海に近いところだったので、地曳網をしたイカや魚を焼いてみたり
ネコと格闘しながら夕食のサンマを焼いたりしていました。
今年の花見のシーズンは、久しぶりに自宅付近で主催をしたこともあり、
押入れの奥からご登場いただいたのです。
炭で焼くといつもの鶏肉がこんなにうまくなるんだね、と感心されましたよ。
ところで、七輪を含めた珪藻土の製品が「削り出し」で作っているってご存知でしたか?
形を作るのにいわゆる「金型」などなく
彫刻刀が大きくなったような道具で、人が削って作っているんです。
写真ではちょっとしか映っていませんが、中敷きのパンチング板の穴が
不均一に空いているのを見れば一目瞭然。
この「削り出し」ってところに、建築家としては惚れてしまうのでした。