韮崎でtuttiYのオペラ公演「魔笛」を観劇しました

身近な劇場でオペラの公演があったら、是非足を運んでみてください。

先月のことですが山梨でオペラ公演を観劇しました。

正直半年ほど前まで、山梨でオペラが観る機会があることを知らなかったのです。

コネクトも登壇したことのある、甲府の本屋さんが開いている朝の勉強会、「得々三文会」で上演団体tuttiY代表の川口聖加さんのお話、魅力にひかれて初めて足を運ぶことに。

場所は東京エレクトロン韮崎文化ホール

韮崎という土地に立ち寄ったことがなく、場所的にも初めまして。

感想から先に申し上げると、まさに感激。大満足。市民参加のオペラとは思えない手の込んだ演出、演奏、衣装、舞台装置。閉幕後だけでなく、いろいろな場面で拍手を送りたい気持ちになりました。

心理的には少し距離のあるオペラという芸術を楽しんでもらうために、プレトークでモーツアルトや魔笛の解説をしたり、劇中に歌だけでなくセリフを盛り込んだり。市民が参加しているということは、兄弟・親戚・知人が演者として舞台に出ているはずで、その点でもぐっと近い関係ができているのでしょう。終わった後のエントランスホールは大賑わいでした。

仕事柄、舞台装置に目が行ってしまいます。大掛かりな舞台美術はないけれど、演出やストーリーとぴったり合った舞台装置がありました。1面にだけカラフルな色を付けた40~50センチくらいの四角い灰色の箱がいくつもある、それが主たる舞台装置。出演者が演技の中で運び、時にはベンチにしたり、蹴とばしたり、時には門にしたり、と場面展開の装置としても、感情表現の対象としても機能していて、要素が少ないからこそ伝わる内容がありました。とても粋な舞台装置。

それと衣装。一つ一つ丁寧に作られていて、手抜き無し。よくここまで作りんだな、と感心する衣装がいくつもありました。魔笛はある家のおもちゃ箱のおもちゃたちのファンタジー作品。登場人物にはいろいろなおもちゃや嬢王などが登場します。「6人の童子」というおもちゃ箱の中の平和を願う精霊のような存在を子供たちが演じていたのですが、個人的には童子の衣装がいちばん素敵でした。

 

当日配布のブックレットに川口さんがオペラ公演は「祭り」であり、作り上げていく過程が「まちづくり」に似ていると書かれています。文化を通して人をつなげ、街を活性化させている点では間違いなくまちづくりです。公演が「ハレとケ」のハレの部分なら、自分たちの活動の家づくりや建築、街並みをつくるという活動はケの部分です。少しでも地域に役立てるように我々も頑張ろうと思いを共有し、また新たにしました。

中庭に向けて明るく開放的な階段室をつくるためのサッシの工夫

明るく開放的な階段を作りたい、という方必見です。

長屋のように南北に長い敷地に立つ家。真ん中に坪庭を設けて、光と風の抜ける家としています。今日のお話はそんな坪庭に面した明るく開放的な階段室の作り方について。

 

「明るい階段にしたい」。以前の家の階段室が暗かったため、階段をとにかく明るくしたいというのがご夫婦のたっての希望でした。そこで階段室を先ほどの坪庭を眺めながら登れるような場所に置いて、できるだけ多くの窓を設けるようなプランニングを提案しました。

坪庭に面した階段室のメリットは、坪庭だけあって、お隣さんからに視線を気にすることなく、思い切り開放的な階段室が作れそうだったところ。

逆にデメリットは、階段室を置く場所。間口の狭い敷地のため、坪庭に面することができるのは、南北それぞれ1室のみ。坪庭のさらに南側にある部屋に光と風を取り込みたいので、南向きの階段室にしてしまうとせっかく坪庭に面していた南側の部屋が、階段室があることで暗くなってしまう。よって必然的に北向きの階段室にならざるを得ません。

階段室は普通の部屋と違って、2層吹き抜けの高さがあります。明るくしたいとはいえ、北側の縦に長いガラス面は、コールドドラフトといって、冬場に冷気がサーッと吹き下ろす場所になりやすい。家全体の断熱性を考えたら、本当はご法度な開口部です。そこで寒さ対策は万全にすべし、というのが課題になりました。

さて、設計の初期段階から大まかな方針が決まっていたので、建物の構造的にも工夫を盛り込みました。写真を見ていただくとわかりますが、2階の床にあたる部分の梁を無くしています。代わりに踊り場の高さに梁を下げることとしました。実はこれは簡単なことではなくて、専門用語で床剛性を別の場所で確保し、構造計算が成立するようにしているのです。

断熱性能を犠牲にしないよう、樹脂サッシとLow-E複層ガラスふんだんに使って、サッシのカタログを睨めっこしながら、製作可能サイズと踊り場高さ、階段などの寸法調整を重ねてできたのがこの階段室です。

 

一番大きなガラスのサイズが、縦2.37m×横1.62m。開閉できるサッシは他の場所に十分あったので、ここはあえてはめ殺しとして少しでもガラス面を大きくしました。

製作可能なサッシ高さの関係で、梁がもう一本必要だったので、こちらは2階内部の手すり高さに揃えました。

サッシを使わずに、ガラスを直接躯体に固定する方法もありますが、コールドドラフトで結露する可能性がゼロとは言えません。安全を見て、サッシを使い、結露水を受け止めてくれることを期待しました。

写真ではわかりにくいですが、梁部分の外部側は外壁材を細かく貼りつけ、内部はグルっと三面プラスターボードを貼ってペンキで仕上げてあります。手間のかかる、職人さん泣かせな工事だったでしょう。図面を書くのは簡単ですが、それも実現しようと骨を折ってくれる職人さんあっての話。この場を借りてお礼申し上げます。

大きなはめ殺しガラス、しかも2階の高さに窓があるような場合は、私たちはガラス拭きが難しいことをあらかじめ建主に説明するようにしています。開閉できるサッシの場合は何とか外側も拭ける構造になっていますが、このガラスはそれも不可能です。説明を聞いたご主人は、長〜いモップを用意して自分で清掃するから大丈夫!と言っていただきました。

最後にもう一つ。階段室の奥、2階の壁にも腰高のガラス窓があります。ここはダイニングテーブルに座った時に坪庭を見下ろすための腰窓。ある時、模型を作って階段室の説明をしていたところ、「2階のダイニングからも坪庭を見下ろしたい」とご要望をいただきました。要望通り、もしかしたらそれを超える階段室が出来あがりそうなことに、ワクワク感が止まらなかったのだと想像します。

坪庭に面する階段、廊下の窓にはカーテンやブラインドは一切不要なように目隠しを確保しています。家に帰ってきた夜、1階の個室からごはんを食べに上がる時、いつでも気分のリフレッシュする階段ができたのではないでしょうか。

 

そんなこんなで実現したのがこの開放的な階段室、というわけです。書いてみると、たった一つの階段室でも建主の要望、敷地の条件、施工の大変さなど、多くの物語を経てここに出来上がっているのです。そのおかげで同じお金を使っても納得感、達成感が違うものができあがるのが建築家との家づくりの醍醐味です。いちど体験してみませんか

半年分の穢れを落とそう 一宮浅間神社で茅の輪くぐり

正月からの半年にうまくいかなかった事、ついてなかったことが多い人は6月末に厄払いをしましょう。コネクトのメンバーは言うほどの不運がある訳ではないですが、生きていればどこかでご迷惑をかけたり、虫を殺生していたり、気持ちが萎えることがあったりするもの。

日本には茅の輪くぐりという古くからの習慣があります。(本当のところ、滝川は最近になって知りました。ここは知ったかぶり情報です。)心身の清浄、夏バテ防止、病気予防、残り半年の開運を祈願して行うのが茅の輪くぐり。初詣の夏バージョン、というところでしょうか。

神事である夏越の大祓は6月30日に日本全国の神社で行われている行事ですが、人が通れる茅の輪はそれなりに手間のかかる設えなのでしょう。設置している神社は多くないので、WEBで検索してから訪れることをおススメします。コネクトのメンバーは甲斐国一宮浅間神社へ。富士の神、木花開那姫命が御祭神。千年以上の歴史を持つ神社。入り口に唱え詞が掲示されているので、毎回見ながらくぐっております。

この先半年も順調に物事が進みますように。

都内の展覧会ハシゴは散歩にぴったり 森美術館から根津美術館まで

都内で美術館を巡りながら散歩するのはどうですか。向かったのは梅雨の始まり期。まずはロン・ミュエク展。2008年に十和田市現代美術館スタンディング・ウーマンを見て以来。国内にいるとあまり見る機会がないのが普通なのかな。単体の作品を見るのも楽しいが、複数の作品が展示される個展は作品や作家の背景も含めて知ることができてさらに楽しい。一部を除いて写真撮影可だったので、写真もいくつか載せます。

ミュエク自身は作品についてあまり語らないようで、解釈は鑑賞者の判断。何といってもスーパーリアルな人の再現性が素晴らしい。皮膚のしわ、肌の色、皮膚の下の毛細血管、産毛、目の色、どれも本物としか思えない、生きているよう。ただし実際の人間より大きかったり、小さかったりすることで違和感を生み出している。大きくされた頭蓋骨の作品は縫合線も見事に表現され、生きていれば脳みそが詰まっている内側まで見ることが可能。鼻骨骨折の経験がある滝川は、ここの骨が折れたんだよね、と話しながら見ていました。

今にも動き出しそうな人物彫刻たちは、見る人それぞれがストーリーを自由に想像することができるので、子供たちにも人気な様子。小学生の団体がクリップボードを下げて見学していました。

SNSなどで画像だけ見ていると、スーパーリアルな彫刻にどんな意味があるのか?と遠い記憶の十和田以降は疑問に思っていた時期もありましたが、今回実物を再見してあまりのリアルさ加減にひれ伏すほどの圧倒感がある作品でした。職人技を通り越して、ミュエクにしか産み出すことができない作品群はみどころ満載でした。皆さんならどう感じる?

お昼は南翔饅頭店で小籠包ランチ。六本木ヒルズのオープン当初は行列だったことを思い出しながら、急ぎ足で向かうと、すんなり並ばず入店。調べてみたら2003年だから、もう20年以上前の出来事でした。ひと時代過ぎていて、もう落ち着いているわけです。

午後は目ぼしい展覧会がなかったので、根津美術館へ。山梨の近所には根津記念館という根津嘉一郎の生家が保存されて一般公開されています。こちらは記念館なので、美術品はなく、入場無料。犬の散歩で通るルートにあるので、勝手に親近感を抱いている根津嘉一郎。根津美術館は隈研吾がデザインした凛としたアプローチで気分転換してから入館。企画展は「はじめての古美術鑑賞 美術の中の文字」。お茶を習う過程で、軸飾りを拝見する機会が多く、わずかですが見る目が培われつつあります。勉強を兼ねて来訪。塩山の恵林寺茶道教室では禅宗に関係する軸が多いので、江戸期の大名が所有していた軸などは趣が違ってまた面白い。徳川家慶筆の風竹図はやけに落款が大きく、絵の一部となっていたり、酒井抱一筆の七夕図は画面構成が素晴らしかったり。また伝王振鵬筆の観音図は、観音様の輪郭など線だと思っていたラインが微細な文字を書き連ねることで線を表した作品。展示ケース内に設置してある拡大鏡を通してしか認識できないくらい小さい文字。14世紀の作とあるので、ルーペもスマホで拡大もできない。毛筆で書いているが、どうやって書いたのだと思える異常さ。書き手の緊張感がすさまじい。

屋内展示を見学後は庭園を散策。青山とは思えない緑の深い園内には茶室もある。しかもいくつかの茶室があちこちに点在してできるほど広い。川も流れ、船茶室までこしらえてあった。事業で儲けたお金を、価値のある美術品や日本庭園に投資し、こうして後世に残してくれているのは素晴らしい。

さてこの2つの美術館がある場所は六本木と青山。少し離れていますが、歩いて巡るのもちょうど良い距離。六本木通りから外苑西通りの一本西側の通りを曲がれば、20分ほどで歩けます。私たちは国立新美術館のミュージアムショップに立ち寄りしてから根津美術館に向かったので、青山霊園を通り抜けて約30分の距離でした。青山霊園も根津美術館の庭園も都内にいることを忘れてしまう緑に囲まれた環境。現代美術と古美術。どちらも堪能できたよき休日でした。

マンションリフォームの施主と共にショールーム見学

春ごろに声をかけてもらいスタートした、府中のマンションリフォーム。施主は滝川の古くからの友人夫婦とあって、できる限りのことをしたいと思い、設計を進めています。

滝川のことを元々知っていた、ということもあり、リフォームについて下調べをあまりせずにまずはコネクトに相談してみよう、という始まり方だったので、どんなことができるのか、どのくらいの月日がかかるのか、何が困っているのか、といった仕事の進め方を丁寧に説明することから始まりました。

ヒアリングを進めると、間取りを大きく変更することまでは考えていないものの、色や素材に対する思い入れが深いことが判明。一つ一つセレクトを楽しみながら、納得して素材を決め、セレクト自体が楽しくなるような設計方法を取り入れています。

とはいえ、現在の建築業界は原材料高騰やナフサショックなどでコストの変化が激しい時期。数年前ならこのくらいの予算があればできる、と判断して進めていたところですが、施工会社数社にお願いして、概算というかたちで一度金額を出してもらってからリスタートを切ることを前提に進めています。

トクラス新宿ショールームでユニットバスとキッチンを見学。ヤマハが名称変更して誕生したトクラス。失礼ながら施主から聞くまでは知りませんでした。人工大理石と、ピアノで築いた塗装技術の扉が特徴。ユニットバスは清掃性に配慮したディテールが多く、施主好みな商品でした。

クリナップ新宿ショールームではステンレスのキッチンを見学。既存のキッチンにはディスポーザーが付いています。調べていると、ディスポーザーは全てのキッチンに取付できるわけではなく、ステンレスシンクが主流であることがわかりました。それであれば、キッチン自体をステンレスで作っては、ということでクリナップ。自宅キッチンもクリナップなのでおススメしてみました。

名古屋モザイク代々木ショールームではモザイクタイルを見学。水廻りの複数箇所にタイル貼りを予定しているので、現物を見学に。事前にカタログで目星をつけていたものの、現物との違いに驚いたり、スタッフにおススメされたタイルに目が輝いたりと新たな発見が連続した良い出会いがありました。

ミラタップ表参道ショールームでは洗面、建具などを見学。設計でイメージを共有しているもの以外も一度見てみようと訪れました。やはりここでも使い勝手を体験することで新しい意見をいただくことができました。

少し手間はかかっても、ショールームに出向いて施主とイメージを共有することは大切な過程だと再認識した時間でした。

 

家具蔵表参道店で懐かしい顔にお会いしました

設計の仕事として家づくりを始めたころからお世話になっている家具蔵。家具蔵は無垢材を使った家具を製作販売している会社。勝沼のいえツラナルノイエで実際に納品していただき、さらに過去には表参道店の1階にある1枚板ギャラリーでセミナーを担当させてもらったこともあります。過去には建築家31会の協賛会社として我々をサポートしていただいた時期もあります。

そして担当はいつでも三上さん。トトロ出身ですかと言いたくなるような風貌と笑顔が忘れられず、仕事上では疎遠になってもFacebookなどでいつも気にかけていた人物でした。木に対する愛情があふれてしまい、一緒に来た施主も家具を探しに来たのか、三上さんの話を聞きに来たのかわからなくなること数回。一時期体調を悪くされ、引退なのかなと思わせるような記事をお見かけしていたので、残念な気持ちでいました。

この時はたまたま近くを通る機会があったので、自宅テーブルの参考にと表参道店に寄ってみたところ、2階にあるショールームからでて屋外階段を下りてくるトトロ、もとい三上さんに遭遇。互いに驚いての再開でした。

その後は三上トークを浴びて、楽しい時間を過ごさせていただきました。写真は帰り際、再開記念に撮ったものです。

勝沼の家 過去ブログ https://connect-arch.net/?cat=32

ツラナルノイエ 過去ブログ https://connect-arch.net/?cat=39

家具蔵でのミニセミナー 過去ブログ https://connect-arch.net/?p=3212

石和温泉のゲストハウスに併設されていた不審庵の写しでミニお茶会

前回のブログでお話しした都内の友人が来訪する話には続きがあります。山梨に来るにあたって、宿泊先をネットで探してくれ、予約してくれたのがゲストハウス璃洛(りらく)。気軽に集まりたいからコスパ重視で、素泊まりで予約しておきました、と聞いて正直全く期待していませんでした。場所は事務所の近くの石和温泉。料理好きなメンバーがいて、近くにワイナリーもあり、夜は買い出しして部屋飲みかな、と考えていました。ところが、ホームページを拝見すると、館内に源泉かけ流しの温泉が3ヶ所。アプローチが和風旅館のようにしっとり感がある。宿泊室以外にキッチンや広間などの共有スペースがしっかりあることが判明。

さらに驚いたことに、共有スペースの一角にお茶室まであるらしい。写真を見て、これは茶道稽古人として、お茶を一服差し上げねばという気持ちがふつふつと沸いてきました。友人らがお茶のことなど何もわからなくとも、同じ建築学科出身であれば、空間としての茶室を楽しむことはできるであろう、とも考えました。

室内から見た茶室
茶道口から見た内観

まだ自前の茶道具をひと揃え持っているわけでもないので、薄茶一服と和菓子をお出しするために、現地にないものを前もって見ておこうと、璃洛に事前視察に行ってみました。

エントランス脇の屋内に小庇付きの茶室があり、廊下から小さな石庭に降り、つくばい、躙り口がある。内部は3畳台目、床の間、水屋がある。水屋にはかなり充実した道具も並んでいました。茶巾を持っていけば何とかなりそう。

調べて分かったのが、表千家の代表的な茶室・不審庵の写し。不審庵に入ったことはないので、調べた範囲ですが、茶道口が脇入りになっている点が違いますが、床柱・違い棚・天井・給仕口などは正確に写されていると思います。私が習っているのが表千家なので、偶然の出会いに感謝でした。

申し訳ないけど季節や会のテーマに合った道具の選定、といったことを今回は抜きにさせてもらいました。夜の宴の準備を考えると、当日は準備片付けを含めて1時間。

当日は茶杓が無いことが判明して仕方なくスプーンで代用したり、電気釜のコンセントが点前付近になく遠くから引廻すことになったりと、小さなハプニングはありましたが、メンバーは作法など分からなくても、空間も薄茶も楽しんでいただいた様子。おかわりが続き、会話も弾みました。

スタッフに茶室のことを聞いても作られた経緯などはわからず、茶室としての活用もしたことがないくらいの返答でした。蹲の水の出し方がわからず、炉畳の下地が入っていないのか畳が凹んでいたりと、少しもったいない。宿泊者は無料で利用できるので、遠方から来る方をもてなすにはとても良い施設だと思います。

壁掛けエアコンの存在を消すための工夫


住まいの中には必ずあると言ってもいい設備、エアコン。

天井が高くなったり、スッキリした空間を作ろうとすると、悩ましい姿を現わす設備、エアコン。

お金をかければ、天井内に入れる天カセ、とか床下空調など方法はいくらでもありますが、見た目に多少目をつぶれば、費用対効果が良く、取り換えも簡単な空調機器は壁掛けエアコンなわけです。

完全に隠してしまうことは無理でも、少しでも存在感を隠したい。ということで、写真の事例では、壁に横長に連続した吊り戸棚の一部をルーバーにして、その奥にエアコンを仕込んでいます。フィルター清掃のために、ルーバーは着脱式にしてあります。吊戸棚の一部にすることで空気の流れに淀みがなくなります。

実はこの事例では失敗があります。手の届く高さの吊り戸棚としているので、自ずとエアコンの高さも低くなってしまいました。200ボルト電源の大空間用を設置してあります。ペンダント照明の位置がテーブルなので、近くの席はさすがに冷気暖気がキツイのです。

検討中の方は、テーブル・椅子の配置と高さにも注意して決められると良いと思います。

兜山からの景色は曇っていても味わい深い

事務所兼自宅の近くに兜山という低山があります。標高913m。低山ながらくさり場、岩場もあり、ロッククライミングをする方が必ずいるような珍しい山です。ハイキング気分でも登れるし、登山装備の確認用にも重宝します。数年前に富士登山を予定していた頃は足慣らし、道具慣らしに何度か登っていました。

 

そんな兜山に都内から遊びにくる友人一行が登ってみたい、とのことで久しぶりに向かいました。遊びに来ると言っても、都内で開く飲み会をたまには滝川のいる山梨でやるか、くらいの遠出のさらにオプション。前日は遅くまで飲み明かし、人によっては寝苦しくて一睡もできなかったという悪コンディションでしたが、無事敢行。

 

台風一過の晴れ間を期待して登ったものの、あいにくの曇り空でしたが、おかげで暑さにはやられず、心地いい疲れをもらった酔い覚ましの登山となりました。

山頂から少し盆地方面に下ったところに展望台があり、木々に覆われた山頂とは違って、崖に向かって伐採をしてくれているおかげで、おそらく富士山方向が抜群の眺望でした。「関東の富士見百景」にも選ばれているから、さぞかしなのでしょう。

 

下山後はほったらかし温泉で汗を流し、ウエストマウンテンでランチをいただくという、ごく近所旅。ランチ直後から皆に眠気が襲ってきた時にはさすがに年齢を感じました。無理はいけませんね。

藤森昭信氏のお茶室で開かれた茶会でお手伝いしました

建築史家の藤森昭信氏をご存知でしょうか。建築の歴史を研究する建築史家であり、建築家でもある藤森氏はタンポポハウスや滋賀のラ・コリーナなど他にまねのできない世界観の建物の設計も手掛けています。滝川は大学で建築史を専攻していたので、藤森氏の書いた本を教科書に勉強していましたほどよく知っているお方です。その藤森氏が長野県茅野市のご実家近辺にいくつかの奇妙キテレツな茶室を複数お持ちです。

どこが奇妙か。風が吹けば揺れる、木の上のツリーハウスのような茶室。船のような形をしていて、泥で作られたいかにも重そうなのに吊るされて宙に浮いた茶室。他にも足元に屋根しか見えない低い茶室など。建築や茶道のことなど分からない人でも思わず「おもしろい!」と心から叫んでしまうような建物たち。

五庵 東京五輪の来賓接待用として造られた他より大きめの茶室 2面開放できる

そして私たちが昨年から始めた茶道の稽古。そこでお世話になっている表千家茶道の大村康太郎教授が藤森さんとお知り合いとのことで、一般には開放していない藤森さんのお茶室群をお借りして数年に1回、教授に近しい人限定で「藤森茶会」を催しています。2年前は点前や作法など何もわからない状態で、客の一人として参加しました。それでも十分楽しめたのですが、今年はお手伝い要員としてもう少し深くこのイベントに関わることが叶ったのです。

 

高過庵。毎回高いハシゴを上り下りして給仕しました。自分が健康な時で良かった。

藤森茶室は茶道からも建築からも自由そのもの。客を招いてお茶を一服さしあげるための最低限の設え、という基本のキだけを用意したら、あとは氏の想像力の及ぶ限りの遊びが実現した空間になっています。

4つある茶室のうち3つは、ハシゴを登ってお茶室の下側、つまり床下に最小限サイズの出入口(=躙り口)があって、短くても家の2階に相当する高さまで登らなければいけません。建築を体験することに於いて、中にたどり着くまでが大変であれば大変であるほど感動が増幅される、というのは真実です。家づくりであれば門から玄関までのアプローチをわざと長くすることや、ロフトにハシゴで上がるのと同じワクワク感。ハシゴで下からアプローチ、という時点ですでに1本取られています。

空飛ぶ泥船 出入り口が一番狭く大変

躙り口が床下から、というのも絶妙です。一般的な茶室の躙り口では、床の間が正面に見える位置に開けられることが多く、首を垂れて床と床の間を見ます。この場合は対面する、対峙するという少し緊張した関係性を生み出します。これが床下からだと、天井を見上げてから水平方向を見渡す、つまりしっかり3D空間をしっかり体験してから茶室に入ることが自然とできるのです。これが自然素材で包まれた内部空間と相まって柔らかい感動を生み出します。

手伝いを担当したツリーハウスのような高過庵(たかすぎあん)の場合は、途中踊り場がある二段ハシゴになっていて、中に入ると「よく登ってきました」という、山頂に辿り着いたかのような亭主も客も一緒になった達成感が1回の茶会メンバーに共有されます。素晴らしい。

低過庵 屋根が、ガーっと。体験しないとわからない楽しさ

話し始めるとキリがないので、またどこかの機会で藤森茶室の楽しさについては語ることとして、今回可能になった裏方的な視点で見てみましょう。

 

一般的に茶室には「水屋」と言われる、裏方専用のゾーンがあります。1回に6人程の客が茶室に入り、1日に4~5回転させるには、皆のお腹に入るものを補充し、汚れたものを洗う場所があることでスムーズに茶会ができるのですが、当然ながら4つある藤森茶室のどこにも水屋がありません。すると、手伝い仕事の多くは傍の木陰で湯を沸かし、ポットに入れて運ぶ。お菓子を準備して外から運ぶ、といったもの。汚れた建水の水は「捨てますよ!」の掛け声とともに、窓から野に放つ。お茶を習っていると、二十四節気、季節の花・棚飾りといった四季の移ろいを反映させた作法を学ぶのですが、藤森茶会ではまさに自然の中で風と光を直接感じながら茶会が開かれます。

最後に。準備のために前日入りした時のこと。藤森さんから直々に高過庵のハシゴの掛け方を教わりました。少し離れた場所から一人で設営できるようにキャスターが付けられたハシゴを押して、踊り場まで立てかける。ずれないように上部を縄で結ぶ。粗野な雰囲気がありながら、細部までしっかり計算されたお茶室でした。