一級建築士定期講習@新宿


秋はお勉強のシーズン、という訳ではありませんが、週一のペースで何かしらの講義を聴いている気がします。
先日は建築士の定期講習会。三年に一度受けないと、業務に支障をきたします。この制度が始まって二度目の講習会。思い起こせば姉歯事件以来、建築の世界はさまざまに襟を正す方策をたててきましたが、これもそのひとつです。
朝の9時半から夕方の17時半まで講義。お尻が痛くなりますし、集中力もなくなってきますが、最後にマークシートの試験があるので、寝るわけにもいきません。お年を召した白髪の建築士も散見され、歳をとってからこの講義はさぞお辛いだろうな、とか、自分は何歳まで建築士と名乗れるのだろうと考えてしまいます。
つらいばかりではなく、最新の技術、法律、制度などを網羅的に教えてくれるので、実務面でも参考になる話も多く、お金を払って一日中座っている価値はありそうです。
建築基準法は今年の6月に改正されました。そこそこ大きな改正でしたから、こちらも学ばないといけませんね。

上棟式



朝霞の家では先日上棟式が執り行われました。雨続きの秋が続きますが、運良く晴れ渡り、施主家族と共に屋根の上まで上がって、すがすがしい気分になりました。
近年の災害、特に雨と風は以前のものより激しくなっています。設計上できることは対応し、現場も影響を受けずに進められると良いです。
上棟式では工務店の社長が神主に代わり主宰し、棟札を祀り、塩、米にお神酒を浸したものを建物一階の四隅の柱にまきました。
施主と各工事を担当する会社が顔を合わせることで、お互いの気が少しでも通じ、引き渡し後のメンテナンスでお会いしても顔のわかる関係が作れます。
ひと仕事終えた、職人さんも皆生き生きとして、とても晴れ晴れしい式でした。

鉄骨を木でサンドイッチしたパナソニックのテクノストラクチャー見学会 @二子玉川

 

木造の家でも昔から一部に鉄骨の梁を入れたりしてスパンを飛ばしたり、
二階に書庫やピアノなどの重いものを置くための荷重を支えるために、
梁を木製から鉄骨に変えることはよくあることです。

現在進行中の朝霞の家でも、一部に鉄骨を使っています。
一部でなくて、全体を鉄骨造にした方がそれは頑丈ですが、
コストがグンと上がりますので、そこは予算との相談。

木造でありながら、一部鉄骨梁の良いところを拡大して、
ひとつの工法システムとして昔から展開しているのが、
パナソニックのテクノストラクチャー工法。
薄肉の鉄骨梁を使い、広いスパンや二階床のはねだしを実現しながら、
大工さんが工事ができる木造の工法です。

テクノストラクチャー工法の現場見学会が二子玉川で開催されると聞き、行って来ました。
週末の相談会でよくパナソニックには行くので、工法について知ってはいたのですが、
実際に見たことはなかったので、良い機会です。

写真にあるように、パッと見は木造。
でもよく見るとグレーの部分は梁にスチールが見えます。
たったこれだけ、と言えばこれだけなのですね。
でもそれほどコストアップせずに木造ではあきらめていたことが
簡単に実現できるのはいいことです。

住宅の場合は、工務店さんが限定されますが、
住宅以外ではどの施工会社であっても部材供給をしてくれるらしい。
しかもよく見ると接合部の金物や、基礎の形状など
職人さんが困ってしまいそうな納まりはどこにもありません。
これは工務店の規模に制約を受けることなく導入が可能と見受けました。

1階に大きな部屋が必要な保育園を作り、2階は賃貸の住宅などという
構造的に無理が生じそうな計画で威力を発揮しそうです。

ヤマベの耐震改修セミナーで木造の耐震改修について学ぶ @東京建築士会


木造住宅を設計していると、構造のことであれこれ知りたくなります。そのとき参考にする専門書に、「ヤマベの木構造」という本があります。構造を専門にしている人も参照するような本で、私などは全て理解することは一生ないだろうという、深い内容が詰まっています。
著者の山辺さんが、昨年木造耐震の本を出版されました。私が所属している東京建築士会でセミナーをされるというので、聴講しに行ってきました。
近年の震災の話、地震動の性状、木構造の基本などの話ですでに二時間くらい。分厚い本を解説してくれるのか、不安になったころから、実務に即した耐震診断、改修の話がバンバン始まり、寝る暇なくあっという間に午後の半日が終わっていました。
山辺さんはもう70台。内容もさることながら、ほぼ半日立ちっぱなしで講義なさる姿に感動すら覚えました。

渋谷ストリーム 散策




少し前に渋谷駅に旧東横線渋谷駅舎の屋根がオマージュとしてよみがえるのかも、といった記事を書きました。
先日、渋谷ストリームという施設?エリア?としてオープンしていたので、散策したきました。
地下に潜ってしまって不要になった渋谷駅から代官山駅までの間の地上線路と渋谷駅舎を並行して走る渋谷川の再生と共に計画しています。
かなり巨大なストリートがつながっているなあ思っていたら、床には線路らしき鉄のプレートが走り、今でも複線ぐらいは走れそうな幅と高さの空間が建物を貫通しています。歩いて散策したところが、昔の線路。広々していていいですよね。
ヴォールト屋根のスペースに至っては、小さな駅舎のサイズながら、何も用途のないオープンスペース。真上は首都高速、下には国道246号が走るという都会ならではの光景。まだまだ再開発工事中の渋谷駅。次はどんな変貌ぶりを見せてくれるか、楽しみになりました。

Tokyo apartment オープンハウス


週末に板橋区で開かれていた、賃貸集合住宅のオープンハウスに行きました。藤本壮介という建築家が8年前に手がけた建築。すでに住んでいる人がいること、築数年たっていることが、普通ではないオープンハウスですが、それよりも驚いたのが、結構な雨の日だったにもかかわらず、見学者の列ができるほどの盛況ぶり。メディアで様々に紹介されていた建物なので、建築関係者がワンサカ来ているだけではあるものの、こんなに人の集まるオープンハウスできるだけても凄い。
典型的な家型を三層に計6個?9個?をずらしながら重ねてあるので、こどもの積み木みたいな外観の面白さがあります。住戸によっては二つのボリュームがつながっていたり、屋外の?!階段で二部屋がつながっていたりするようです。
見学できたのが地下のある一階の部屋と、スキップしてつながる三階の二室だけだったので、アクロバティックなところは外部階段しか体験できませんでした。
家型の重ね方は無秩序で自由。三階の家は二階の屋根に取り付いた階段で上がる、といった具合。
敷地はいたって普通の大きさで、周りは戸建ての住宅がある都会の住宅地。よくここまで自由にやった、と思う。やらせてくれた施主、説得した建築家、実現させた工務店、みんなをほめてあげたくなる。
元気をいただきました。
さて、私もがんばろ~。


建て方工事


それぞれの居場所のある中庭のある家では、建て方工事が進んでいます。
安全確保のため、住まい手はなかなか内部に入る機会がなく、現場に訪れることが少ない時期だとは思います。現場では鳶職、大工、監督など大勢が結集して工事にあたる、活気ある時期です。遠巻きながら私も作業を見ています。
木造の場合、建物の骨格が数日でできるので、二階に上がって部屋ごとに見え方、お隣さんの窓との関係など、設計どおりにできているか、もしくは設計に問題はなかったかをチェックします。今さら部屋の大きさは変えられなくとも、窓の取り付け位置などを少しは変更はできますからね。
この敷地は奥行きが長かったため、南側にレッカー車を置き、工事をしました。一部に鉄骨があったり、木の部材の仮置き場に困っていたりと、難儀をしながら3日かけて建て方工事をしました。

週末は相談会とリフォームセミナー


この週末は三連休ですね。
わたしは土曜日と日曜日にそれぞれ別の場所で相談会を、日曜日はリフォームセミナーでお話をします。いずれも無料なので、ぜひお出かけください。
9月15日 13時から16時
建築家31会週末相談会 @中野コネクト事務所
9月16日 10時から17時
パナソニック建築家よろず相談会 @パナソニックリビングショールームさいたま
同日 13時30分から14時
リフォームセミナー @パナソニックリビングショールームさいたま
何かしら資料を持参して来場いただくと、回答が具体的になりますよ。よろしくお願いします。

サッシ最終確認 @それぞれの居場所をしつらえた中庭のある家

 

それぞれの居場所をしつらえた中庭のある家では建て方に向けた準備作業が進む中、サッシの打ち合わせを事務所でおこないました。サッシ工事を担当いただくのはよくお世話になっている株式会社守甲さん。31会でもお世話になっています。

今日はサッシについてのお話をしましょう。

サッシとは数年前まではアルミサッシを意味していました。ここ数年で樹脂サッシの価格破壊ともいえる普及が進んできています。断熱性能が高く、しかも価格がある程度入手しやすくなってきた今は樹脂サッシで計画するのが正しい選択と考えます。断熱性を少しでも考えるのであれば、アルミサッシはもう古いと言えるでしょう。

とはいえ樹脂サッシがセレクトしやすくなったのは木造の住宅の場合だけ。コンクリート造や鉄骨造用のサッシはまだまだアルミサッシが主流です。木造用のサッシはビスをもんでサッシの枠と躯体を固定しますが、コンクリートや鉄骨の場合は「溶接」が必要なため、熱に弱い樹脂はまだ開発が進んでいないのでしょう。

また樹脂とアルミとでは素材自体の強度としてはアルミの方が高いため、樹脂で同じ強度を持たせようとすると、ガラスを支える枠の部分が大きくなって、ガラス面が小さくなってしまうという難点もあります。そういった見た目を気にされる方もいます。

他にも樹脂サッシではヨコに数枚のサッシが連続する連窓や、タテに連続する段窓を計画して大きな開口部をつくろうとしても、選択肢が限られてきます。自由度がまだまだアルミサッシには及ばない、ということですね。

そこで、樹脂サッシを基本としながら、ひとつの家でも設置場所や実現したい開口部の大きさなどによってサッシの種類を適宜選択をしています。

この家は中庭に面した部分に多くのサッシがあるため、同じ面積の住まいより枚数の多いサッシが計画されました。さらにある程度高い断熱性能を確保することが、長期優良住宅の認定取得の条件となっていたので、多くのサッシを樹脂としています。一方、中庭に面するサッシは少しでも明るさを室内に取り入れたい、という意向から枠が小さくなる樹脂とアルミを合体させた複合サッシを採用しました。

打合せでは、開き方向、ガラスの種類、網戸のあるなし、操作金物などのスペックをひとつひとつ確認しながら発注に向けての図面を整備しました。

お父さんのあこがれ「書斎」を客間の片隅にこっそり仕込んだ家

 

建設当初、シンクタンクにお勤めのご主人は自宅に帰ってから本を読んだり、文章を書いたりする仕事を持ち帰ることが多く、書斎スペースを希望されました。しかし、住まい全体の希望をまとめると、書斎を部屋として確保できるスペース的な余裕がなく、専用の部屋は難しいことがわかりました。しかも建て替えをすると現状よりも家が狭くなるため、リフォームが大前提。予算のあるなしにかかわらず、住まいを大きくすることもかないませんでした。
そこで3畳ほどの小さな和室の客間のさらにその一角に造り付けのテーブルを設け、書斎としました。本棚を多く設け、書斎としての作り込みもしっかりしています。客間を書斎としてある程度作り込みができた背景には、客間の利用方法が明確で限定的だったからです。
客間というと、突然の来客を迎える場であったり、実家のご両親が宿泊する、リビングの延長として横になれる畳の部屋であったりと多目的に使える部屋にしたい、という場合が多いのですが、ここではたまに来るご子息一人が1泊だけ泊まれる部屋でよい、というもの。来客はリビングダイニングで接客するので、宿泊のためには簡素であっても問題ないという要望でした。
であれば書斎と客間の機能を一緒にすることで、空間を兼ねることができると考えたのです。
ただし一つ悩みがありました。
奥様が和装になるときの着替え。横になってゴロンとする。といったことからも、客間はこの家の中でただ一つ、畳の間にしたい、というもの。畳の間に書斎というのが難しかったのです。施主がご高齢だったこともあり、床座での書斎スペースは膝や腰に悪く難しい。
そこで、椅子を用意する代わりに、本棚と同じ高さにしつらえたテーブルの下の床を掘りごたつ式に床を下げ、座椅子を置いてもらうことで畳の間と書斎を一体に作ることにしたのです。

 
 左手にある白いボリュームはトイレです。トイレの奥行きを少しだけ縮めて、その奥に書斎スペースを作りました。
また、テーブルに座った正面が階段室に向いていたので、縦長の吊り障子を設け、風が抜けるようにしました。吊り障子は階段室の踊り場側からも開け閉めができるようになっています。
 
 
右手には本棚がありますので、テーブルとして実際に使える幅は70センチそこそこです。それでも視線が抜け、風が通るこのスペースは、落ち着いて文章を考えるのに最適だと施主からも喜ばれています。こうした小さなスペースであっても、しっかり快適に過ごせるように作り込むと、大変居心地のいい場所に変身します。
小さいながらも、工夫を重ねていくことで良い空間が生まれます。

あきらめず、作りましょう。書斎。