古民家訪問 土間の渡り方

玄関は家の顔。できる事なら広々と作りたい。つまり広い土間は憧れの対象である。しかし二世帯住宅の親世帯と子世帯をつないだり、アトリエや離れ的なスペースを作るなら、土間は憧れでなく、必須に変化する。
地方で仕事をすると、この土間の出番か多い。その時に悩むのが、渡り方の問題。主となるスペースとサブとなるスペースは明確に分けたいから土間なのであるが、時には、いやいや日常的に人の行き来はするのである。スノコを敷いてみたり、飛び石的な場所を用意したりしていたが、先日たまたまお邪魔した写真にある古い民家の玄関土間では、分厚い板を飛び石替わりに置いていた。聞くと、解体された家の大黒柱を加工して置いたのだとか。歴史の味も加味されて、良い雰囲気を醸し出しておりました。

南巨摩郡の家 オープンハウス


今日は専門学校の先輩講師でもあるSmart Runningさんのオープンハウスへ。
引き戸の使い方がうまかった。廊下のような動線だけの空間は
まったく作らず、引き戸を開け閉めすることで空間を水平方向にも
垂直方向にもつなげる仕掛けがされている。
その中でも階段の踊り場側の引き戸が最も効果的。
閉めると小さな客間なのだが、開けると洗面、階段、客間までがひとつながりになる、
コンパクトなのに広々した場が用意されていた。
子供が踊り場の下を楽しそうに行き来していました。
知り合いだからこそ聞ける細かな部分までいろいろ教えていただきました。
小泉さん、千葉さんありがとうございました。

窓からは水平線だけ

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先日知人の設計した海沿いの家を見る機会がありました。
道路沿いの斜面地を巧みに使っていて、
一つフロアを上がったところがメインフロアなのですが
リビングダイニングから見える風景に感動。
プライベートな空間と、空、そして海がまさにひとつになっていました。
ときどき模型を見たり、話を聞いたりしていましたが
とてもシンプルで、わかりやすい構成をしていたので
「ああ、こんな感じなんだろうなあ」と想像していたものの
本物から受ける印象はそれをはるかに超えていました。
表現が適切かどうかわかりませんが、この家にいるとお腹の下の方がどっしりとします。
安心感、というんでしょうか。
建築家としてだけではなく、人間の本能的にも良い場所に仕上がっていたように思います。
自然を取り込むこと、これは常に考えながら設計していますが、
その重要さを改めて認識した日でした。

SEKI DESIGN STUDIOのオープンハウスに行ってきました


年末にSEKI DESIGN STUDIOのオープンハウスがあったので行ってきました。
事務所から歩いて数分という距離にある、リフォーム物件です。
1階に置かれた家具階段のデザインが要になっていて、素晴らしいものだったのは当然として、
私が一番感銘を受けたのは、関さんのデザインに対する取り組み方でした。
「すべてのものをデザインしたい。昔はそれが当たり前だったんじゃないですか?」
と言われ、家具、食器、お箸までデザインをして、販売までされています。
さらに写真にあるのは今回新たに製品化を念頭にデザインされたタオル掛け、ペーパーホルダー。
一つ一つ丁寧に積み上げていくことで、確実に上がっていくであろう空間のクオリティが想像できます。
日々の作業でいっぱいになってしまう自分も、そうでなきゃいけない!と
気持ちをシャンとさせていただいた、2010年の締めくくりでした。

ニコ設計室オープンハウスへ


土曜日はパートナー標由理の先輩であるニコ設計室のオープンハウスに行ってきました。
狭小住宅の物件を多数手がけていらっしゃる設計事務所とのことで
それは勉強になることがあるはず! と一番乗りで向かいました。
場所は荒川区三ノ輪。RC造4階建の作業場付の重層長屋です。
建築家の建てるRC造は打ち放しのストイックなデザインになりがちですが
ニコさんは素材の使い方が豊富。
仕上や色を空間で切り返して変化させるように
構造躯体も同じように扱っているところが我々にとって一番の勉強どころでした。
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たとえば、トイレだけ紫の壁紙が使ったり、
3階の床だけをミモザのヘリンボーンとしたり、というのが内装だとすると
躯体のRCは外観では塗装してしまっていても、
4階の勾配屋根の見える部屋では打ち放しがドーンと見えている。
といった具合です。
またコンクリートの壁にしても床にしても構造的に必要なところ以外は
乾式で作ることで、いたるところに飾り棚を設けられるようになっています。
本や小さな花を飾れる場所が多いと生活が豊かになりますよね。
これを狭小住宅でやるにはとてもいい方法だと思いました。
ところで重層長屋って何でしょう?
案内をしていただいた榊さんに、私もまず最初に質問してしまいました。
長屋というのは、法律では1階に独立した玄関のある住宅が
壁を介して隣り合っているもの、で
上下に重なっているものを重層長屋と呼ぶ、そうです。
確かに1階に出入り口の多い建物でした。
自分たちとテイストの異なる建築家の物件は
いろんな意味で勉強になるなあ、というオープンハウスでした。
ニコ設計室さん、ありがとうございました。

オープンハウス巡り

先日知り合ったアトリエスピノザのオープンハウスが都立大学で
やっていたので、訪ねてみることに。
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たまたま空いている時間だったらしく、1階から丁寧に案内をしてもらい、
裏話なども聞きながら一気にロフトまで巡る。
敷地分割をして小割になった土地に建っているので、
開放できる向きが限られている中で、トップライトと
インナーバルコニーをうまく使って光のあふれる空間ができている。
水廻りの上に設けられたロフトがルーフバルコニーと連続していたり、
階段室の正面壁が隣家を使ったピクチャーウィンドウになっていたりして、
建物のコーナーに抜けを作っているので、外観からは想像できない開放感あって
なるほどな、と勉強させていただきました。
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余談ですが、目黒のこのあたりは独立したての頃に設計したA邸があるので
よく知っている場所のはずなんだけれど、最近山梨に通いなれている眼には
電車から見える住宅密集度の高い風景がちょっと異様に見えてしまった。

東京カテドラル

近くにあるのに行ったことのない名建築はまだまだいっぱいありそう。
丹下健三の東京カテドラルもその一つ。
「え~、行ってないの!」っておしかりを受けそうだが、今回が初めて。
しかも聖なる空間を使った特別イベントの日に入ることに。
東京カテドラル聖マリア大聖堂 公開・特別展示
    +
マルチメディア空間パフォーマンス
SOFT ARCHITECTURE@St.Mary’s Cathedral, Tokyo
というイベントで、六本木時代のco-labでニアミスしていた
REが主催していました。詳細はこちら
大聖堂で行われたパイプオルガンとLED照明のライトアップが連動した
パフォーマンスは想像以上に良かった。
建築が作られた主な用途は別にして、
光と音が空間を純粋に使い、覆い、満たすとしたらこんなふうになるんです
という実験のような場で、それでいて心地いい時間でした。
地下墓地には丹下さんが納骨されていて、探すとネームプレートがありました。
近くには磯崎新の弔辞も掲示されていて、大物の謙虚な言葉にぐっときました。
大聖堂内部からのライトアップは美しかったものの、
自然光がトップライトから降り注ぐ、日常の空間を体験したくなりました。
また行ってみよう。
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鎌倉と坂倉準三展

お盆明けの1週間はいつにも増して濃密にお仕事させていただきました。
人が来たり、打ち合わせに出かけたりが多くて、ブログの更新ままならず。
昨日は鎌倉方面へ行くことになり、たまたまできた仕事の合間の時間に
県立美術館へ坂倉準三展を見に行くことに。
これはグラフィックデザイナーから、「行くべき」宣言を受けていた展覧会。
遠いなあ、時間がないなあと思っていたら、仕事の用事がセットになって念願かなったもの。
ちなみに、こういう巡りあわせを「コネクト」というんだろう。
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展覧会は質・量とも素晴らしいものでした。おススメです。
ジャン・プルーヴェの住宅システムを木造で再構築したものが存在していたのは驚きでした。
帰りに美術館を見ながらぐるっとしてみると、こんなものが。
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いまでは簡単に作れない人研ぎの水飲み台。フォルムが丸っこくて愛らしい。
坂倉というとモダニズムの大御所ですが、こういう人の手に触れるところとか
ファサードの一部、建物の足元の塀といったところにデザインの遊びがある。
建物を設計していると、機能とかプロポーションといった理性的なところをまず考えてしまいがち。
しかし名建築といわれるものには、十分な理性をもった骨格と共に必ず遊びがバランスよく
混ぜられていて、そこが人に愛される、長く使われる建物になる所以なのだと思う。
コネクトの理念でもある「長く使われる」建物に必要なものを再確認させていただきました。

葛西臨海水族園

連休に家族で葛西へ。たぶん7回目ぐらい。
マグロの回遊水槽でマグロがグルグル廻らなくなってしまってから
どうなるんだろうと思っていたけど、
夏休みで親子がいっぱいでした。
未だに色あせない白いガラスドームは、フツーの人でもわかる
モダニズムの王道です。しかも品がある。
あそこにいると背筋がピンとします。
谷口さんの設計した建物はどれもそうなんですけど。
今回の発見はペンギンが水槽にへばりついているところが
下から見れる場所があったこと。
そりゃあもう並んじゃってます。
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もう一つ発見は、水族館以外の公園が素晴らしいこと。
砂浜もあるんですよ。海の。
遊泳禁止なので波打ち際でパシャパシャ程度ですが、
十分に夏気分を満喫してきました。
樹木の間を散策するのもいいし、公園にいくだけでも十分な
広さがあるんですね。
都内から地下鉄で行ける夏休み。
行ったことのない人は是非。