お父さんのあこがれ「書斎」を客間の片隅にこっそり仕込んだ家

 

建設当初、シンクタンクにお勤めのご主人は自宅に帰ってから本を読んだり、文章を書いたりする仕事を持ち帰ることが多く、書斎スペースを希望されました。しかし、住まい全体の希望をまとめると、書斎を部屋として確保できるスペース的な余裕がなく、専用の部屋は難しいことがわかりました。しかも建て替えをすると現状よりも家が狭くなるため、リフォームが大前提。予算のあるなしにかかわらず、住まいを大きくすることもかないませんでした。
そこで3畳ほどの小さな和室の客間のさらにその一角に造り付けのテーブルを設け、書斎としました。本棚を多く設け、書斎としての作り込みもしっかりしています。客間を書斎としてある程度作り込みができた背景には、客間の利用方法が明確で限定的だったからです。
客間というと、突然の来客を迎える場であったり、実家のご両親が宿泊する、リビングの延長として横になれる畳の部屋であったりと多目的に使える部屋にしたい、という場合が多いのですが、ここではたまに来るご子息一人が1泊だけ泊まれる部屋でよい、というもの。来客はリビングダイニングで接客するので、宿泊のためには簡素であっても問題ないという要望でした。
であれば書斎と客間の機能を一緒にすることで、空間を兼ねることができると考えたのです。
ただし一つ悩みがありました。
奥様が和装になるときの着替え。横になってゴロンとする。といったことからも、客間はこの家の中でただ一つ、畳の間にしたい、というもの。畳の間に書斎というのが難しかったのです。施主がご高齢だったこともあり、床座での書斎スペースは膝や腰に悪く難しい。
そこで、椅子を用意する代わりに、本棚と同じ高さにしつらえたテーブルの下の床を掘りごたつ式に床を下げ、座椅子を置いてもらうことで畳の間と書斎を一体に作ることにしたのです。

 
 左手にある白いボリュームはトイレです。トイレの奥行きを少しだけ縮めて、その奥に書斎スペースを作りました。
また、テーブルに座った正面が階段室に向いていたので、縦長の吊り障子を設け、風が抜けるようにしました。吊り障子は階段室の踊り場側からも開け閉めができるようになっています。
 
 
右手には本棚がありますので、テーブルとして実際に使える幅は70センチそこそこです。それでも視線が抜け、風が通るこのスペースは、落ち着いて文章を考えるのに最適だと施主からも喜ばれています。こうした小さなスペースであっても、しっかり快適に過ごせるように作り込むと、大変居心地のいい場所に変身します。
小さいながらも、工夫を重ねていくことで良い空間が生まれます。

あきらめず、作りましょう。書斎。

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