夏の旅行記05 ドナウ



しばし時間があいて、すっかり秋になってしまいましたが、
まだまだ夏の旅行記は続きますので、お付き合いを。
訪れたところはウィーンとブダペスト、でした。
共通する都市の要素としては、ドナウ川があります。
川幅はどちらも100m以上あり、河岸には歩道・車道・トラムなどが走っているので、
街の中でも空の広い解放的なスペース。
都市は川沿いにできる、がセオリーでしたね。
ブダペストでは河岸からの風景がとても美しく、
王宮や国会議事堂も対岸からのファサードを重視しています。
国会議事堂の夜景は見事なもの。

初めて知ったのですが、このブダペスト、古くは川を挟んで
ブダ市とペスト市にという別々の町だったそうな。
あるとき、セニーチェさんという富豪?が橋をかけよう、と提案し、
お金も出して橋をつくり、往来するようになったので、
「ブダペスト」というひとつの名前になった、とのこと。
大枠の話です。間違っていたらごめんなさい。
しかし時代を経て、両岸の街が違う名前だったと考えることすら
無いことを考えると、偉大な創造力です。
発想やイメージするちからがあれば、分断されていると思っていたものこそ
強固に結びつけることができる、いい話だと思いました。
でも付け加えるなら、やっぱりお金も必要だということでしょうか。
というのは、ずいぶん立派な橋を最初から造ったようなのです。
戦時中は戦車が往来しても持ちこたえていたほど頑丈だったみたいです。
最初だから、お金が無いからと安普請なものを考えがちですが、
初めてだから、いや最初だからこそ、どうだ!と言わんばかりのものを作ることも大事。
その方が大切に使うので、長持ちすることにつながる。
と思いますが、いかがでしょうか。
それにしても、個人のお金で橋をかけるって、どれだけ裕福なんでしょうかねぇ。

夏の旅行記 04 街路

旅行記01ではトラムや交通について書きましたが、
今日は歩く人の目線から。
旅は歩くことから始まるように、
街なかで歩くこと、散歩することが楽しいと、
その街の印象が格段に良くなります。
道幅が狭いからなのか、法規制があるからなのか、
日本であまり見かけないのが、歩道に並んだカフェやレストラン。
ウィーンでもブダペストでもメインの観光地となると、あちこちにあるのは当然のこと、
少し離れたところにも路上カフェが出現しているところが、文化の域ですね。
歩道幅1.5mくらいのところに、対面2人掛けのテーブルと椅子を並べていたり、
路上駐車スペース二台分にデッキを敷いて、カフェにしたり。
執念か?と思わせる作り方をしているところも多かったです。
さて、ブダペストのホテル近くでたまたま見つけた
長さ100mくらいの新しい街路は、秀逸なデザインでした。
歩道が両側5m、車道が4m、計15mくらいのどこにでもあるような幅員。
そこに、ツルが天空に伸びたような街路灯。
レンタルサイクルスポット。
巨大なバネの形をした駐輪用鉄パイプ。
六角形をモチーフにしたペーブのパターン。
将棋の駒のようなボラード。
そしてオープンカフェ。

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この街路を歩行者だけのスペースにするために、一般車はシャットアウトされていますが、
バスだけが通過できるように、道の真ん中に電気昇降式のボラードがありました。
路線バスが近づくと、地中に埋まってフラットになる仕掛け。
かっこいいー!と感心した半面、いずれ壊れそう、とも思いましたが。
ひとつ一つは特筆すべきデザインでもないですが、
まとまりのある公共空間がある密度でデザインされていると、
エリアの魅力はすばらしいものになる、良い事例だと思いました。
GoogleMapで調べてみたところ、Ferenciek tereというストリートでした。
ストリートビューはまだ古い街路。そのうち更新されるでしょう。

夏の旅行記 03 ハンガリーの温泉


3日目。ハンガリーのブダペストに移動して、温泉のあるホテル、Gellertに泊まった。
ハンガリーは世界でも有数の温泉大国。
美術館や建築を毎日巡るのにも飽きるだろうと、
旅行の中間にハンガリーを入れることにして、自分も本格的なOFFモード。
ホテルもかなり威厳のある古さで、世界遺産に登録されていました。びっくり。
たまたま宿泊中にはヨーロッパの将棋大会がホールで開催されていて、
日本人のおじさんが何人もいて、これまたびっくり。
ハンガリーの温泉は日本のように温度が高くないのと、屋外のプールのような
使い方をしている(水着着用)ところが多いので、日本人には肩すかしな印象がありますね。
Gellertの温泉にはは唯一、地下にある室内風呂が、36度。
他のプールに使っているとそれでもじゅうぶん暑いので、ここは温泉気分になっておススメ。
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でもそれ以外の広大なエリアはやはり、ぬるめ。
というか、温泉スパだと思えばこれはこれで楽しい。
中年のおばさんがプールでダイエット体操していたり、
デッキチェアで日光浴をしながらビール片手に語らう人が大勢いたりと
何もお湯につかっているだけがリラックスできる方法ではないのだ。
時間をゆったり使って、ぬるめのお湯に入るための一日。
かなーり、リラックスできた一日でした。
ちなみにこのGellertの温泉は迷子になるほど広いです。値段が高いだけあるようです。
地下の室内風呂、マッサージルーム、室内プール、巨大な更衣室エリア、
カフェ、吹き抜けの2階、屋外のデッキエリア、サウナ、屋外温泉、波のプールまでありました。
下は波のプールの写真。波出てないけどね。
私の知ってる波のプールといえば、としまえんと西武遊園地ぐらいですが
ここの波はこどもが浅瀬で立っていられないくらい強いので、要注意。
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そしてやはり最後に建築のお話を。
ここでも気になったのはタイル使い。
地下の青いタイルの空間は素晴らしい。
それほど大きくないトップライトからの光だけがあり、
雲が多いと少し暗いぐらいの明るさが、ブルーを引き立たせている。
迷路のような空間なので、どこにあるか迷ってしまうけど、
見つけたときは感動間違いなしです。
さらに、ありとあらゆるところがタイルで仕上がっているのですが、
幅木のような位置にある、換気用のため?のガラリだったり、
天井の給気口まで全部タイルなのです。
天井給気口は穴ごとにノズルの長さまで変えてある手の凝りよう。
いいね~。
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夏の旅行記02 新旧の手仕事


ウィーンのシュテファン大聖堂はヨーロッパでも指折りの聖堂のひとつでしょう。
こういった聖堂が街なか、それもメインのショッピングストリートに
突然ボンッと存在しているのが素晴らしい。
銀座や表参道を歩いていたら、道の途中に神社の本殿が建っているようなもの。
ん~、建物に対する文化が違うから、比較はできませんねえ。
明治神宮は長い砂利の参道がいいわけですから。
いずれにしてもその唐突感が面白いのが、街の中心にあるドゥオーモ。
カラフルな屋根、荘厳なステンドグラス、街を見下ろす塔など見どころいっぱいの
建物ですが、ふと疲れてベンチに座っていても、気づくことがいっぱい。
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躯体のヒダヒダに、ぴったり合うように作られたベンチの形状。
型紙があるのかもしれませんが、そう簡単に合うもんじゃないと思うのですが。
そしてスピーカー。
BOSEって書いてあるけど、このために作ったの?というくらい
建物にマッチしていました。
柱にしても、素材は何?石であれば削り出しているのか?大きなレンガみたいなもの?どう加工すればこの形になるの?と疑問は尽きず。
こんな形状のベンチは、職人技的な手作業をするマイスターが作っているはず。
もちろん街を散策していると、そんな手作業は新しい建物でも、いろんなところに見られるものです。
下はフンデルト・ワッサーという芸術家が設計した集合住宅です。
かなりカラフル&装飾&曲線使いな建物。私は決して真似できない。
そこに使ってあるタイルが、どう見ても一品生産もの。
わたしの経験ではたとえタイルを特注することができても、数百平米からのロットが必要なハズ。一つづつ作る、なんて
可能なのかな。
建物のための部品をカタログから選ぶことが多い我々の設計方法では、人に感動を与えられないぞ、と気を引き締めた次第です。
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夏の旅行記 01 トラム


忘れないうちに夏の旅行記を少しづつ。
この夏は7月にウィーンとブダペストに行きました。
暑さは日本と変わらず暑いですが、湿度が無い分楽ですね。
日が長いので、子連れでも8時、9時ごろまで出歩いていました。
街歩きの脚として使うのがトラム。
町中いたるところに走っていて、信号渡ればすぐに乗れる便利さは、
都市を快適に利用するには必需品とさえ思える移動手段でした。
東京のように地下鉄がメインというのもいいですが、
風景を眺められないから、いつまでもピンポイントでしか町を
とらえることができない。
トラムだと移動中の町並みも一緒に覚えていられる。
もちろんバス、という手段もありますが、これはあまりに細かくて
にわか旅行者には、ちとハードルが高く、あまり使いませんでした。
トラムの路線番号を覚えて、発車間際に走り乗ることができたら
ちょっと旅慣れた感じがしてうれしいものでした。
写真はウィーンでの朝の街角風景。
高架の上を地下鉄が走り、犬の散歩をする自転車と、トラム、そして車。
何とはない風景ですが、日本の道路の幅員を考えると、
こういった複数の交通手段が平面的に交差すること自体が少ないかも、
と思ってパシャリと撮った一枚です。

LOST & FOUND



朝晩は少し涼しくなりましたが、まだまだ暑い日が続いてますね。
私はこの週末は山梨で連日の打ち合わせでした。
その帰りの電車でのお話し。
山梨事務所が各駅しか停まらないので、鈍行で中野まで帰ることが多い私。昨日は高尾で中央特快が隣で待っていたので、ラッキー、これで早く帰れる。
ハズでした。
が、八王子を過ぎたあたりで何か荷物が足りない、と気づく。バッグにキャスターと、あと何だっけ。模型だ。網棚だ。やっちまった~。
模型の入っているビニール袋はそれだけでもかなり大きくて、床置きするのは難しく、網棚に上げてあったのですが、寝ぼけている時はこれが危険。せっせと作ってきた模型だから、もう一度なんて作りたくない。いや参った。
豊田駅であわてて降りて、駅員に聞くと、忘れ物承り所、なるものがホームにあるとか。そんなものが駅にあることすら知らなかったので、看板には後光が差しているように見えました。これは言い過ぎ。
降りた電車がたまたま車庫に入る車両だったので、点検が入って、高尾駅に取り置きしてくれていました。これが、甲府まで引き返すハメになっていたかと思うと、不幸中の幸いとはこのこと。
帰宅が1時間ほど遅れただけで、事無きを得ました。良かった。
数年前には、パートナーの標が山手線の網棚に忘れた荷物を、ちょうど一周して同じ場所に乗った私が拾うという神業をしたこともあります。
網棚の荷物は忘れがち。みなさんも疲れた時の網棚は要チェックですね。

夏のハイキング 西沢渓谷


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以前から行きたいと思っていた、山梨市にある西沢渓谷。
やっとこのお盆に行ってきました。
渓谷沿いの気持ちよい、気軽なハイキング~と思っていたら、
なかなかどうして険しいアップダウンのある登山となりました。
夏でも長袖がないと寒くなる渓谷沿いを、ゆっくり歩いて3時間で登り、
帰りは林業用のトロッコ道を1.5時間くらいで小走りで駆け下りてきました。
ひんやり気持ちが良くって、森林浴、マイナスイオンいっぱいの
山歩きは夏にこそ行けて良かった。
お盆の時期でもそれほど混雑していないので、おススメですよ。

忠太に遭遇


両国を歩いていたら、伊東忠太の震災記念堂に遭遇。
正面から見ると唐破風のある和風建築だったけれど、
近寄ってみれば鉄骨鉄筋コンクリート造のがっしりした建物で、
後方には物見櫓まである外観は異形な雰囲気を醸し出していた。
これぞ忠太らしい。
建物は今でいうコンペ形式で選ばれたらしく、
資料館にはコンペ案のパースが葉書大の大きさながら
いくつも飾られていました。
記念堂だけにシンボライズされた建物が求められたらしく
似たものは一つとしてなく
忠太になった経緯はよくわからず。
今話題になってる新国立競技場のコンペでは
経緯を後世にはっきり示してほしい!
と思うのは私だけではないハズ。
資料館にある東京市の震災復興模型が大きくて圧巻。
ガラスケースに逆トラス梁までついてました。
ここは建築オタクの隠れた穴場かもしれません。
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川越まつり


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昨日は川越在住の造形作家佐藤伊智郎さんに誘われて
川越まつり&ホームパーティーに家族で行ってきました。
私は埼玉の所沢出身なのですが、川越まつりどころか川越に降り立つのは初めて。
こどもは山車や踊りを見て歩き、わたしたちは蔵造りの街並みを見て歩ける
とても楽しい一日でした。
黒漆喰の街並みはたまたま開発から取り残された旧市街を保存することで
できたもののようですが、
今では電柱もなく、マットな質感の黒い外壁が並ぶ様子は
正直かっこいいし、他ではまねできないエリアを作っています。
黒漆喰の外壁は、備長炭を漆喰に混ぜ、左官工事で塗った後は絹で拭き、
最後は素手で磨き込むんだそうです!
んー何たる手間。
途中、お寺の境内には国内唯一の手作りお化け屋敷の店なども出ていましたが
泣き叫ぶ子供を無理には連れて入れず、断念。
このお化け屋敷、大寅興行社という見世物小屋一座が運営するもので、
麻布十番まつりや花園神社まつりにも出ているようです。
ドキュメンタリー映画も上映されているくらい、希少価値のあるもの。
見たかったな―。
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あいにくの雨模様になって、夕方からはひと駅移動して伊智郎さんの家でホームパーティー。
ご実家でパーティーを開いていただき、隣接する彼のアトリエを拝見し、
さまざまなアーティストに出会うという、盛りだくさんな時間でした。
なかでも楽しみだったのはアトリエ訪問。
作品を見れて、製作の過程がわかる、作家のアトリエほど楽しいものはありません。
伊智郎さんは鉄を使ったアートを造る作家。
異形鉄筋を曲げて作ったテーブル、緑青が吹いた銅板で造った森を飛ぶ昆虫がいる鉄製欄間、
角鋼をねじった独鈷杵みたいなもの。
最近見ていなかった彼の作品は、確実に良くなっている!と感動。
展覧会ではいつもバシッと決めている伊智郎さんも昨日は作業着だったので、
いつも気になっていた、熱を使わないで手で鉄を曲げている様子を見てみたくて、
「鉄はどこで曲げているの」と軽ーく振ってみました。
優しい彼は6ミリ厚ぐらいの2mほどあるフラットバーを持ってきて、目の前で実演してくれました。
土間に置いた鉄に体重をかけ、
「フー」と息を吐く時にだけ曲がっていくフラットバー。
迫力ある力作業。その様子に他の人も興奮。
異形鉄筋も角棒も工具は使うものの、基本は手作業で曲げていくんだそうです。
すごい。かっこいい。
この日はご実家にまつわる建築的な話題もたくさんあったのですが、
それはまた、別の場所で。
とっても楽しい一日でした。伊智郎さん、ご家族の皆様ありがとうございました。

哲学堂公園


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近所にありながらまともに行ったことがなかった哲学堂公園は
その名の通り哲学ワンダーランド。
園内の看板、解説文まで哲学用語びっちり。
「唯物」とか、「認識」とか学生時代にお目にかかった用語に
脳みそが懐かしんでおりました。
哲学の賢人を祀った建物は、三角形だったり、六角形だったりと
これまた現在の自分が楽しめるオモシロ建築がいっぱい。
公園としては山あり小川あり、遊具ありとこどもが1日遊んでも
飽きないほどの広さがあって、娘はテツガクということばだけ覚えていても
単なる公園であります。
大人も子供も楽しめて、これぞテーマパークじゃん、と思った次第。
どこぞの○○ランドより面白いぞよ。
あ~もっと早く知っていればよかった。
また行ってみよっと。
1枚目の写真
哲学堂だけに瓦にも哲の字が。哲哉さんとか哲夫くんとかが泣いて喜びそう。
2枚目の写真
平田篤胤やらの3賢人を祀った三角堂。地山まで三角になっていて、
三方に階段がついておりました。
ちゃんと軒反りまで付いていて、扇垂木の刻みは難解を極めたんじゃないだろうか
と大工さんのことを考えたりしてしまいます。
3枚目の写真
公園の案内看板。ひらがながないと、こどもには全く読めません。
それにしても哲学を体験できる場所なんて、世の中他にあるのか?!
こりゃすごい場所かも。
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