「郊外の社会学―現代を生きる形」若林幹夫、ちくま新書649
私が学生の頃に比べて建築家が都市について語ったり、
問題提起をしたりする機会がずいぶん減った。
右肩上がりの経済を背景にした時期には夢を伴って都市を構想することができたからだろう。
現実には法律や経済、そして人間の脳みそが都市を支配していて
あまりに複雑にできあがったものの上に多くの生活が成立していることが
思考停止状態を生み出しているのでは?と思う。
とはいえ、建物を設計する仕事をしていると、たった一つの建物を設計していても
その建物が面している通りから、もっと広い広がりを考えないではいられない。
性分とでもいうのだろうか。
そこで私は一つの方法でこれから都市を考えて行きたいと思っている。
キーワードは郊外だ。
何故か。
自分がそこで育ったから。
もう少し具体的に言うと、団地。
私にとっても都市というものは考えたり、しゃべったりするのは難しいと感じてきた。
それを自分が育った環境から考えればいいんじゃないかと最近は思っている。
前置きが長くなりました。
この本は都市を考える時の一つのツールとしてある、郊外の現実を
具体的に記述しようとしている、ということです。
経済性や商業主義がベースになって作られた郊外に
これからどのような未来を作っていくべきかを知るためには
読んでおくべき本だろう。
だけれど、読み終えてふと思ったのは、
郊外にはない、地域の風土とか歴史、コミュニティって
日本人だからこそ、山、川、風景、気候といった自然のものから
産み出されたものだったろうけど、そういうものがないところで
育った人には、何が規範になるんだろうという疑問。
土地そのものを作っちゃうオランダ人ならどう思うとか。
その時にはやっぱり規範は人間同士が作るしかないと思う。